虫歯により健康な歯が2mm以上ない、歯が割れているなどの場合は、基本的には抜歯が必要ですが、歯の状態により残せる場合もあります。
当医院では、上記のような場合であってもすぐに抜歯と診断せず、レントゲンにて根の長さと隣の歯の状態を考慮の上、慎重に虫歯を除去します。
そして健康な歯質を限りなく残すように努めた上で、歯の量、状態に応じて診断し以下の方法のご提案を行っております。
1.MTM(小矯正/エクストルージョン)
2.クラウンレングスニング
3.MTAセメントによるクラックの補修
4.意図的再植法
(※上記すべて保険適用外)
※いずれも、通常の歯より耐久性低い歯がほとんどのため、Br(ブリッジ)する歯や入れ歯のバネがかかる歯など、噛む力が通常以上にかかる状態のお口の方には適応しません。
また、歯軋り、食いしばりが強い方は予後不良になる場合があります。
メリット、デメリットを把握していただき、抜歯か保存にチャレンジするか選択していただいております。
MTM(小矯正/エクストルージョン)
2mmの幅を得るために、歯を上に引っ張りあげる方法です。
1. 虫歯などにより歯冠が失われ、歯根しかない歯の両隣の歯に矯正装置のワイヤーをつけます。
2. 歯根にフック状のワイヤーを付けて、ゴムの力で引っ張り上げます。
3. 歯を引っ張りあげてから骨が出来るまでしばらく待ったあとで、歯周靭帯を整える手術をして、仮歯を入れ固定します。
4. 矯正力をかけた期間と同じ期間固定し、安定後、型取りし、被せ物をしていきます。(別途:セラミック代)
治療前の歯です
ワイヤーと歯の間には2mmほどの隙間があります
歯周外科(クラウンレングスニング)
土台となる歯の高さ2mmを得るために、骨を削る方法です。(外科処置のため、写真は割愛させていただきます)
実際の治療例↓ この症例は治療3年半経過。歯根が短いのがリスクですが、痛みなく何でも噛める状態を維持しております。
MTMとクラウンレングスニングングの比較の表
(適応、デメリット、治療期間、金額、回数、共通で適応外、保証)
・デメリットとして、通常の歯より根の長さが短くなるため、歯が弱い。
・この治療をお勧めできない状態として、クラック、破折線がある場合、根の長さが短い場合(被せてもすぐに脱離してしまうため。)
この治療により、虫歯により抜かなくてはいけない歯の抜歯を回避することができます。
MTAセメントによるクラック(破折部分)の補修
再根管治療にはヒビや破折、内部の穴などが感染源が原因で再度痛みや膿みが溜まっていることがあります。その際、今までは抜歯と診断するより手段がなかったのですが、小さなひびであればMTAセメントで埋めることによって、歯のひびを封鎖し、細菌が入りにくい状態にすることができます。
また、治療を何度も繰り返していたりなど、歯が薄くなり穴が空いてしまっている場合も抜歯せず、MTAセメントで埋めることによって、細菌の侵入を防ぎ、歯の寿命を伸ばすことができます。
MTAセメントとは
歯科用の水硬性セメントで、ケイ酸三カルシウム、ケイ酸二カルシウム、酸化ビスマス、石膏などが主な成分です。
強アルカリ性(PH12)で、強い殺菌作用をもち、口腔内のように水分の多い状態でも硬化する性質を持ってています。当医院での根管治療の充填剤はもちろんのこと、ヒビ(クラック)や穴(パーフォレーション)にも使用し、歯の寿命を伸ばす治療のひとつとして使用しています。
ただし、ヒビではなく、完全に歯が割れてしまい歯肉が中に入り込んでしまっているような状態、歯の穴が大きすぎる場合には、適応できないこと、100%の治療ではないことをご理解の上、施術させていただいております。
費用:根管治療(回数2~3回程)35,000円(税込)
別途ラバーダム防湿のための隔壁、ヒビ、穴などのMTA修復 各5500円(税込)
※当医院では根管治療は保険適用外です。ご了承ください。
意図的再植法
意図的再法とは、一度歯を抜いて、根の外にある感染部分を取り除き、再度歯を戻してくっつけるという方法です。
リスク(デメリット)
・歯の根の形によっては、抜く際に歯が折れてしまい、そのまま抜歯になることがある.
・再度歯がくっつくには、根の周りにある歯根膜という組織が必要不可欠になるのですが、その際に歯根膜が取れてしまったり、損傷する場合もあり、その際はくっけることができない。
上記より、通常の根管治療の上、どうしても根管外に細菌感染があり、治癒しないという症例に限り、施術させていただいております。
治療例
(抜歯し、ヒビ割れ部分の清掃、補修)
レントゲン左が再植直後、右が再植半年後、骨ができているのがわかる。
治療し2年3ヶ月経過(2021.11月現在)、痛み、動揺なく、しっかり噛めているとのことです。
メリットも大きいですが、リスクも多い処置なので、患者さまの強いご希望+リスク把握していただいた上での治療になります。